映画化されたので興味があって読んでみた。タイトルにも惹かれるものがありますね。若い時って自分は人と違って、なにか特別なことが出来るんじゃないかって思っていて、でもだんだんそうじゃないことに気がつき始めるんだけど、その境目でもがいている時の心の叫びみたいな(笑)
初めは暇つぶしのつもりで読んだ。絵もうまくないし、それほど期待してなかった。でも最後の方、映画化された理由が少しわかった。
主人公がすごくリアル。お話も嘘みたいな設定だけど、めちゃくちゃリアル。例えばお金を借りるシーン、金額が2万円とかがリアル(笑)
主人公は本当にダメな奴なんですが、とても救いようがある憎めないオッサン。娘が風俗で働いているのを知り、その理由が留学したいからだと聞いて、腹を立てます。自分に。娘はガッカリさせてしまったかなと心配するけど、娘にではなく、自分にガッカリするところがイイ。
40歳で漫画家を目指すことにした主人公に、70過ぎの父親は罵倒しながらもいつも冷静にツッコミます。
君は何歳まで生きるつもりなの? 人間はねいつかは死ぬんだよ。 それでいいの君は?終わっちゃうよ人生。
漫画家を目指すと言いながらゲームをする主人公しずおに放った言葉。深い。。
主人公は人に優しい。人生に悩み、死のうとする女性に、情けない姿を晒しながらもなんで生きているんですかと尋ねられます。女性は生きている意味がわからないと迷ってます。すると、人生を24時間にたとえ、24歳の女性に、3でわると8時だよ、まだまだ寝起きなわけで、寝ぼけてるだと諭します。意外と大人なんです。
2巻ではバイトも始めます。会社は辞めましたが漫画家にはまだなれず、生きるために働きます。バイト先の若者にあなたも悩みくらいあるでしょと尋ねられますが、しずおは自問自答します。
悩み?そんなものないです・・・悩んでいる余裕が
いつも正確なツッコミを入れる父親と喧嘩して家出中のシズオには、余裕がありませんでした。
また、べつの若者からも問われます。将来のこととか考えないんですかと。考えないと言い切ります。
あたりまえじゃん!怖くて考えられないよ!
40歳で夢を追いかけるとそうなりますね。そしてふと思います。将来のこと?いや、いま俺は将来が来ちゃってる状態だ、将来中だと・・・
シズオの父は、シズオ以外にもアドバイスをくれます。若者が社会に順応できずに悩み、ダメだと悲観していると、彼の過去の話を持ち出し、自分もダメだけどと前置きし、
大丈夫な人みた事ないけどね。 俺は。
みんなダメでも頑張っているということがうまく伝わりました。
3巻に入ってもシズオ父は的確に突っ込んでくれます。
相変わらずのダメっぷりで、テレビを見ながら飯を食うシズオに父は問います。漫画はどうした?絶好調だぜと答えるシズオに語りかけるように改まって言い放ちます。
オマエはピンチだ
生きていゆく中で、ピンチはチャンスとなる時もあるが、ここはばっちりピンチです。42歳、デビューは遠く、才能がないのか向いてないのか、諦めさせようと必死です。のらりくらちと交わすシズオがいつも笑える。
全5巻で終わるので、ちょっと暇なときに読んでみて欲しい漫画。映画にも興味出たなぁ。堤真一がシズオの役ってカッコよすぎるし(笑)
でも5巻では友情とか、理不尽な母親とか、希望とか、別れとか、リアルな人間ドラマが詰まっていて、5巻がなければタダのギャグマンガだったけど、5巻のおかげで映画にもなるような傑作になったんじゃないかな?
結局、最後につじつま合わせれば人生もなんとかなるかもって、そんな変な希望も持たせてもらえるかも。
シズオはデビューできたかどうか謎のままですが、続きが出るなら読んでみたいな。