ポエマーが将棋の漫画をかくと、泣けて大変です。

羽海野チカさんは完全なポエマーですよね。絵も可愛らしいので少女漫画かと思いきや、ヤングアニマルで将棋漫画とは!攻めるな。しかもストーリーがおもしろすぎる、キャラクターが好きすぎる。毎度、名言が飛び出るので何度も読み返してしまいます。

9巻冒頭、いじめ問題の最終段階、いじめた当事者との話し合い。大人でもいじめをする人がいるんで、子供じゃ当たり前のように起こることで、いじめた当事者は何が悪いか理解できず、果ては理解することを放棄する。中学生くらいなら自分を正当化し、自分は悪くないと主張できるようになるという、いかにもややこしい問題。担任教師は心労でリタイヤ。新任は拒否しますが、受け持つかわりに、いじめた当事者にはそれなりの報いを受けてもらう、内申書に洗いざらい書くと。知らないところで報いを受けることになるいじめた当事者は自分が何者か解らない大きな不安からは、自分の小ささを知ることで解放されると言い放たれる。深い。

中盤は川本家の次女が大切な人でも急にいなくなることを知り、過去のことも思い返すが、大切な人とのつながりも新たな出会いがもたらしてくれると気持ちを強くし、大人になっていくシーンが。小さな失恋と髪の毛を切るというイベントを経て、高校に進学。主人公とのつながりも恋ではなく家族であるとの描写が好きです。自信のなかった自分の心の一部を作り替えてもらった主人公は、年下の女の子を本気で尊敬し、守ろうとします。

後半、将棋のシーンも新しいキャラクターが登場するのですが、絶対的な名人に子供のころから勝てないが、努力で人を惹きつける人物として描かれてます。どのような努力も、それすらかすむような努力をしている者だけが成功に近づけると。今やっている努力は、胸を張って言えるほどの努力ではないと打ちのめされる。将棋の奥深さを名人とともに新たに発見し、一緒に研究しようと約束するくだりは、敵でもライバルでもなく親友のような関係を思わせました。

3月のライオン、いつも美味しそうなお料理も出てくるので、夜中に読むとお腹は空くは、感動して泣くはで大変です。